『空手バカ一代』じゃないけれど

2008.04.23

ライフ・ソーシャル

『空手バカ一代』じゃないけれど

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

40でフルコンタクト空手を始めて8年、痛い思いをしながらも何とか続けてきた。いま秘かにオヤジの間で人気だと言われる武道を続ける効用、特にビジネスにどんなメリットがあるのかを少し考えてみたい。

あくまでも筆者の場合という条件付きだが、武道をやることで明らか
なメリットが二つあった。一つは自分の限界を知ることであり、もう
一つは自分に限界がないことを知ったことである。何やら禅問答のよ
うで申し訳ないが、これが正直なところだ。

まず自分の限界を知ったこと、これを別の言い方で表すなら、世の中
には自分ごときがどうがんばっても絶対に勝てない人がいることがわ
かったということ。こちらが40歳で空手を始めたとき、うちの師範
代は33歳だった。極真会館の西日本大会で優勝したこともある師範
代が空手を始めたのが16歳のときだと聞いた。そして17の時から師
範の代わりに指導していたそうだ。

身長こそ私がわずかに高いぐらいだが、あとは基本的な体の作りがま
るで違う。150キロのバーベルを担いでスクワットをする筋力をもち、
そんなごつい体でありながら柔軟体操をすればお腹までペタッと床に
着くしなやかさも兼ね備えている。得意技は飛び後ろ回し蹴りである、
運動神経も抜群なのだ。こんな人とまともに組手をやっても勝てるわ
けがない。

敵わない相手はほかにもいくらでもいる。そもそも黒帯の先輩方はみ
んなそうだ。組手をしていて何回上段(つまり頭ですね)に蹴りをも
らったことか。頭を蹴られると意識が飛ぶ。だから何とか上段の蹴り
だけは受けようと意識するのだけれど、手でガードしていてもその上
から蹴りを叩き付けられて、耳を痛めたこともある。強い人はなんぼ
でもおるのである。

仮に40歳ですべてを捨てて、それこそ大山倍達の伝説のように山ご
もりでもし、空手三昧の暮らしを十年続けたとしても、おそらくは追
い付けないだろう。世の中にはどうあがいても、絶対に自分にはたど
り着けない極みがあるということをはっきりと思い知った。

もっとも、さすがに不惑ともなると自分の限界なんて薄々以上のレベ
ルでわかっているものだ。「たぶん自分はこの先、どうがんばっても
●●はできないだろう」というリストが年を重ねるごとにはっきりと
見えてくる。が、だからといって、それが絶対に無理かといえばそう
とも言い切れないじゃないかと心の中で反論していたりもする。誰だ
って、自分の限界などそうは簡単に認めたくはないものだから。

が、こと空手に関しては、絶対に(と断言できるレベルで)自分には
たどり着けない極みが目の前に存在する。これを認めることで間違い
なく一つ謙虚になれた。個人営業でコンサル兼プランナー兼ライター
みたいなことをしていると、どうしても虚勢を張ってしまう部分が以
前の自分にはあった。そうした気負いが、圧倒的な存在を知ることで
消えた。人と会って話を聞くときのスタンスがとても素直になった。

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